「これ、おすすめですよ」
そう言われて、つい買ってしまったものはありませんか。
友達に勧められた本。店員さんが熱く語っていた掃除機。口コミで評価が高かった、あのレストラン。私たちはこれまで、ずっと「誰かのおすすめ」を頼りに暮らしてきました。
そのおすすめをくれる相手が、少しずつ「人」から「AI」に変わり始めています。
「ちょっと聞いてみる」の相手が変わった
少し前まで、何かを買う前には検索していました。比較サイトを開いて、口コミを読んで、ブログを何本もはしごして。
最近は、AIに一言聞いて終わり、という人も増えてきたと思います。
「一万円以内で、使いやすいドライヤーを教えて」
「初めてのキャンプに必要なものを、予算別に並べて」
こう聞くと、ものの数秒で答えが返ってきます。しかも、こちらの条件に合わせて、です。
便利だなと素直に思います。何本も記事を読み比べていた時間を思えば、ずいぶん楽になりました。
人のおすすめには「熱」があった
ただ、便利さの裏側で、ふと立ち止まることもあります。
人のおすすめには、理屈だけでは説明できない「熱」がありました。
「これ、使い始めてから朝がちょっと楽になったんですよ」
「正直、最初は迷ったんですけど、結局これに落ち着きました」
こういう言葉には、その人の暮らしや失敗談がにじんでいます。スペックの数字には載っていない、実際に使った人だけが持っている手触りです。
AIの答えは整っていて、迷いがありません。でも、あの少しの「迷い」や「寄り道」の中に、人のおすすめの面白さがあったようにも思うのです。
AIは「あなた」に合わせてくれる
一方で、AIのおすすめにも、人にはできない良さがあります。
たとえば、こちらの好みや予算、使う場面を細かく伝えれば、それに合わせて選んでくれること。何度聞き直しても、嫌な顔ひとつしないこと。「安いものがいい」「でも見た目は妥協したくない」といった、少しわがままな条件も受け止めてくれること。
友達には聞きにくい、「そんな細かいことで悩んでるの?」と思われそうな相談も、気軽にできます。
人のおすすめが「その人の体験」なら、AIのおすすめは「あなたの条件への答え」。同じ「おすすめ」でも、性質がずいぶん違うのだと思います。
変わっていくのは「選ぶ前の過程」
おすすめしてくれる相手がAIに変わると、変わるのは買い物の結果よりも、選ぶまでの過程かもしれません。
これまでは、情報を集めて、比べて、悩む時間がありました。その時間は面倒でもあり、同時に、ものを選ぶ楽しみでもありました。
AIがその過程をぐっと短くしてくれる分、私たちは「何を大事にして選びたいのか」を自分で言葉にする力が、これまで以上に大切になりそうです。
条件をはっきり伝えられる人ほど、納得のいく答えに早くたどり着けます。逆に、自分の好みがあいまいなままだと、返ってきた答えもなんとなくぼんやりしたものになります。
AIが賢くなるほど、「自分は何が好きか」が問われる。そんな時代なのかもしれません。
それでも「人の声」は消えない
では、人のおすすめはなくなってしまうのでしょうか。
私は、そうは思いません。
AIが整理してくれた候補の中から、最後の一つを決めるとき。背中を押してくれるのは、やっぱり「実際に使っている人の声」だったりします。
使った人が自分の言葉で書いた感想。失敗も含めて正直に語られた体験談。そういうものは、AIの答えが増えるほど、かえって貴重になっていくのではないでしょうか。
AIが「整理役」になり、人が「実感を届ける役」になる。そんな役割分担が、自然に生まれていく気がしています。
おわりに
おすすめしてくれる相手が、人からAIに変わる日。
それは、ある日突然やってくるのではなく、気づいたら「もうそうなっていた」という形で訪れるのだと思います。
便利さは、ありがたく受け取りたい。でも、自分の「好き」を決める役目だけは、手放さずにいたい。
AIに聞く時代だからこそ、「自分は何が欲しいのか」を一度考えてから聞いてみる。それだけで、おすすめの受け取り方は、少し変わってくるはずです。
あなたは最近、誰に、あるいは何に「おすすめ」してもらいましたか。
ここまで読んで頂き、ありがとうございます
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